『 この一点 ― (2) ― 』
ザザ ザ ・・・? タタタ ・・・ タ ・・・・
ジョーは辺りをきょろきょろしつつ 街を歩いてゆく。
もう すっかり慣れた (はずの)この街 ・・・
大通りだけじゃなく 路地もほぼわかったつもりでいたけれど。
いつもとは全然ちがう目的で眺めると ― 知らない街 みたいだった。
「 う〜〜〜ん ・・・? そういうトコって どこにあるのかなあ
表通り にはないよなあ でも 裏通りに あるか?? 」
彼は 首を少々ひねりつつ 歩く。
スタジオ 探しているの。 レッスンしたいのよ
思い返してみれば 彼女は何回も言っていたのだ。
「 ・・・ ふ〜〜ん って 聞き流してたんだ ぼく。
自分にはわからない世界だから ・・・って。
― なあ ジョー。 お前 冷たいヤツだなあ! 」
最近 < 彼女 > の存在は 彼の中でどんどん大きくなってきている。
「 ・・・ こ〜んなに 可愛いヒト だったんだ 〜〜
え こんなオンナノコ、初めてだよ ・・・ う〜〜〜 抱きしめたい〜〜 」
― と 初恋中坊のごとく 胸きゅん きゅん ・・・ な状態なのだ。
その彼女が! 何回も ちょっと不安そうに呟いていたことを
彼はぼ〜〜〜っと聞き流していたのだ!
・・・ ったく〜〜〜 !
とんだヌケサクだよ ぼく は!!!
こんなんじゃ スルー されちゃうぜ?
・・・って告るなんて むりむ〜〜りだけど★
「 とにかく! 彼女の望みを叶えなくちゃ!
うん とりあえず モトマチ で探す! あそこなら詳しいし 」
― と バイト休日、まだお昼前に 早起きして!
彼は勇んでこの街にやってきたのだ が。
タタタタ ・・・・ ズズズ −−− ゴソゴソ
目標もなくめったやたらと歩き回っても ― 見つかるはずは ないのだ。
「 う〜〜〜ん ・・・・?
スタジオ って。 音楽関係のしか 知らないからなあ〜
あ。 でもさ そこで 踊る わけ?
でも 自習したいんじゃないよなあ
・・・ あ 確か バレエ・カンパニー って言ってたっけ 」
彼はついに遊歩道のベンチに座りこみ
得意のスマホを ちゃっちゃと活用し情報を集め始めた。
「 へえ ダンス・ショップ? え この街にもこんなん あったんだ?
これは〜〜 あ あそこじゃん〜〜 よおし 」
ジョーは すぐ先にみえるなんだか ゴシック・ロマン みたいな店舗に
一歩 一歩! 近寄っていった。
ダンス・ショップ ― まったく無縁の世界のオトコノコ としては
ちょっとばかり入りにくい ・・・ 気もしていた。
「 ・・・・? 」
店の前をそれとな〜〜く 行きつ戻りつして覗いてみれば
お?? オトコ いるじゃん?
あ〜〜 そっか そっち系のヒト達 いるもんなあ
・・・ へえ なんかかっこいいなあ
すっきりスタイル いいじゃん??
― ぼく ダサダサ かも★
・・・ う〜〜〜〜 でも フランが
フランの笑顔 みたいし ・・・
あ あ あとは!! ゆうき だけだっ!!
ダッ。
ジョーはキャップを深く被ると ダンス・ショップ の
中に足を踏みいれた。
♪♪ ♪♪〜〜〜〜 ♪♪♪
店内には 軽快な でも スーパーなんかとは違う音楽が
流れている。
・・・? ふんふん ふ〜〜〜ん・・・
あ あれ ・・・
な〜んか自然に足が動くみたいな気分になってきた。
「 ・・・ っと ここはシューズとかウェア の店か
あ〜〜 オトコいっぱいいるじゃん? こっちにも 」
なんか安心して ジョーはうろうろ店内を歩きまわる。
「 買い物ってか ・・・ なんか 情報、ないかなあ
あ。 み〜〜〜っけ! 」
シューズ売り場 ( と 思われる。 試し履きし真剣に
選んでいる男子が そこここにいた ) の隅に パンフのコーナーがあった。
「 あ これこれ! こ〜いうの、探してたんだ〜〜〜
・・・ う〜〜ん ? よくわかんないから 全部もってこ 」
ガサリ。 ジョーはパンフを山ほど持って 意気揚々?店を出た。
「 ただいまで〜す ・・・ ん? 」
勢いよく玄関のドアを開けたのだが いつもの笑顔が迎えてはくれなかった。
「 ・・・ あれえ どこか出掛けてるのかなあ 」
ちょっとがっかり もそもそスニーカーを脱いでいると
「 おお ジョーかい お帰り 」
博士が 迎えてくれた。
「 あ ただいまです〜〜 ・・・ あれ 博士?
・・・ フランは留守ですか 」
「 おお 下の商店街まで買い物に行ったぞ 」
「 え〜〜 言ってくれれば ぼく、買い出しに行ったのに〜〜
・・・ で それで博士 料理 ですか 」
「 うむ たまには ワシがランチを作ろう と思ってな 」
「 あ〜〜 それで 」
ギルモア博士は 割烹着を着ていた ・・・ 案外よく似合っているが。
「 ジョー ちょうどいいタイミングで帰ってきたなあ〜〜
ホット・サンド を作っているのだが ・・・
キャベツの千切りを手伝っておくれ 」
「 え。 ― あ〜〜 百切り くらいなら ・・・ 」
「 よいよい 頼む〜〜 」
「 了解っす! 今 手 洗ってきます〜〜 」
とん たんたん た ん たん ・・・・
まな板がなんだか躊躇いがちな音をたてている。
「 ・・・・ あのう〜〜 このキャベツ ぜんぶ刻むのですか 」
「 うん? おう 頼む。 キャベツた〜〜っぷりの
ころっけ・さんど を作ろうと思ってなあ 」
「 こ ころっけ さんど??? 」
「 左様。 コズミ君の御推薦でなあ 〜 しっかり作り方を
伝授してもらってきたぞ〜〜 」
「 ・・・ え これからコロッケ 作るんですか?? 」
「 いや。 それは フランソワ―ズが買ってくる。 」
「 あ そっか。 あ! きっとね、商店街の肉屋さんで
買ってきますよ、 コロッケ(^^♪ 」
「 ほう? 知っているのかい 」
「 えへへ ・・・ あそこの肉屋の、美味いんです〜〜〜
この前 ぼく、彼女に教えたんです♪ 」
「 ああ それでかな。 ころっけ・さんど が作りたい と
これはフランソワーズのリクエストでなあ 」
「 わ〜〜〜 そうなんですか! おっし!
それじゃ キャベツの千切り〜〜〜 たくさん作ります!
パンにね キャベツとコロッケ、挟んで ソース どば〜〜〜〜っと
かけて ・・・ ウマいっすよ〜〜 」
「 ほう それは楽しみじゃな 」
「 でしょ? あと なんのサンドイッチですか 」
「 うむ ワシは あの卵サンド が好きでのう ・・・
卵は茹でたから これから 」
「 はい!! 任せてください!!!
カラシ・マヨネーズ で めっちゃウマくなります ! 」
「 おう 頼むぞ それじゃ ワシは冷たいトマトサラダでも
作るか バジルがあるといいのだがなあ 」
「 ばじる? あ 博士〜〜 大葉だあるから あれ使いましょう 」
「 おおば ? 」
「 ハイ シソの葉っぱっす。 ま〜 二ホンのバジル かな〜〜 」
「 ジョー なかなか詳しいの 」
「 えへ ・・・ バイト先のコンビニで 覚えました (^^♪
あ 博士〜〜 美味しいコーヒー、 お願いします ! 」
「 おう それは自信をもってひきうけるぞ 」
「 わあ〜い ランチ たのしみ〜〜〜♪
あ ぼくもエプロン、つけなくちゃ ・・・
えへへ フラン〜〜 きみの、借りるね〜〜 」
トントントン こぽこぽこぽ・・・・
キッチンの中は 温かい音でいっぱいになってきた。
「 ただいま 帰りましたぁ〜〜 」
玄関で明るい声がひびく。
「 あ! フラン〜〜〜〜 お帰りっ !! 」
ジョーは ゆで卵を潰していたボウルを抱えたまま 玄関に
飛び出していった。
「 ・・・ あ〜 ・・・ 水滴がこぼれておるのに ・・・
ま 仕方あるまい ナントカは盲目 というからなあ 」
博士はぶつぶつ言いつつ、モップで床を拭き始めた。
玄関では じょー という名の茶色毛の仔犬が ハナを鳴らし
この家の女主人に すり寄っていた!
「 フラン ! お帰り〜〜 ねえ 買い物ならぼくに言ってね
メモ、残しといてくれれば 即 行くし 」
「 ジョー ・・・ ありがとう〜〜 嬉しいわ
でもね 今日は自分で買ってきたかったのよ 」
「 あ そうなんだ〜〜 あの 肉屋のコロッケ? 」
「 そうよ ふふふ お肉屋さんね あげたて をくださったの!
ほら〜〜 まだ熱いわ〜〜 」
彼女は両手で抱えてきた ちょっと油染みたつつみを持ち上げた。
「 あ〜〜 あの店のコロッケだあ〜〜 へへへ いい匂い〜〜 」
「 ね! わたしが見てる前でね 大きなお鍋?で揚げてたのよ
すご〜〜く 熱くていい匂い・・・ 」
「 でしょ? でしょ〜〜 そんでもってものすご〜〜くウマイんだよ 」
ジョーは そお〜〜っとその袋を受け取った。
「 えへへ〜〜 じんわ〜〜りこの熱がいいなあ 」
「 この匂いなら 絶対よ〜〜〜
で ね。 匂いですぐわかったんだけど うふふふ♪ 」
フランソワーズは花が開いたみたいに 笑った。
「 ( うわ かわい(^^♪ ) ・・・ え なに? 」
「 うふふ ころっけ って クロケットのことだったのね〜〜 」
「 くろ けっ と ?? 」
「 そう。 croquette。 わたしの国もちゃ〜んとあります♪
肉屋さんでは売ってなかったけど・・・ 」
「 あ そうなんだ?? くろけっ と ・・・ かあ
じゃあ この味、 知ってるんだ? 」
「 う〜〜ん 同じかどうか わからないけど ・・・
こんなに大きくはなかったと思うのね クリーム系のソースでまとめてあるの。」
「 へえ〜〜 あ クリーム・コロッケ と似てるのかな?
中身は なに? 」
「 野菜とかお肉とか細かく刻んであったと思うわ。
でもね 香が似てるから 味も きっと似てるわよ 」
「 そっか〜〜 あ さっそくサンドイッチにするね!
えっへん フラン 〜〜 ランチはね 博士とぼくとで作りました。
きみは 手を洗って着替えておいでよ 」
「 まあ ありがとう〜〜 うれしいわあ〜〜
ランチ 楽しみ
うふふふ ・・・
博士〜〜 ありがとうございます〜〜〜 」
さて その日のランチ・タイムは もう盛り上がりまくり☆
ジョーのコロッケ・サンドは大絶賛を頂戴した。
「 うむ〜〜 確かにこれは 美味であるなあ〜 」
「 ほんとに〜〜 おいし〜〜 これが二ホンのcroquette なのね〜 」
「 えへへ ・・・ キャベツとソースがめちゃ合ってるよね!
あ フランスのコロッケもこんな味? 」
「 ちょっと違うかも ・・・ ポテトはこんなに入ってないし
形もね もう少し小さかったかも 」
「 そうなんだ〜〜 」
「 でもね ポテト ほくほく〜〜 で美味しい!
ねえ これ。 アルベルト きっとめちゃくちゃ好きだと思うわ〜〜
あ〜 キャベツも甘くて・・・ ソースとめちゃ合ってて
あ〜〜 もう全部食べちゃったわ 」
「 ジョー 卵サンド もウマイぞ カラシ・マヨネーズが効いてるな 」
「 わ〜〜 ありがとうございます〜〜 」
「 ん〜〜〜 おいしい〜〜〜 ああ 食べ過ぎてしまうわ
リキシさん達みたいになっちゃう〜〜 」
フランソワーズは でも にこにこだ。
ジョーも こっそり・・・ お腹をさすってみた。
サンドイッチは 順調に三人のお腹に消えてゆく。
うまあ〜〜〜 おいし♪ うむうむ これはよいなあ
香たかい珈琲も どんどん減ってゆく。
あの〜〜 砂糖 ある? はい これ。 ミルクもでしょ
うん ありがとう〜 ああ おいし〜〜
博士 ブランディ、入れます? おお いいなあ
食べたり飲んだり ・・・ がやっと落ち着いてきた頃
「 あ! そろそろ時間じゃない? 」
フランソワーズが鳩時計を見上げて 声を上げた。
「 ?? なんの? 」
「 ほら TVよ! あの〜〜 スモウ中継 ・・・ 」
「 え ・・・ 今日 あったっけか・・・ 」
ジョーは画面から番組表をチェックした。
「 まだみたいだよ 大丈夫。 4時くらいから 」
「 あ そうなの よかった〜〜〜 楽しみにしてるの。
ねえ 博士! スモウのこと! 伺ってもいいですか 」
「 あいや〜 ワシもコズミ君からの受け売りばかりだぞ? 」
「 いいんです なにしろ 初心者 ですから〜〜 」
「 ぼくだってさ。 あ そうだ そうだ
食後に ちょっと検索してみようか 録画とかあるよ きっと 」
「 それはいい。 ワシももっともっと知りたいからなあ
そしてな 次の <場所> では コズミ君を指南役に
我々も大相撲見物 と 国技館へ出掛けようではないか 」
「 「 わあ 〜〜〜〜 」 」
ワカモノ達は歓声を上げた。
「 すご〜〜い! 間近にリキシが見られるのね〜〜
・・・ あ でも ジョー ・・・ 興味 ない ? 」
「 え そんなコト ないよ。 今まで関心がなかった っていうか〜
二ホンのワカモノの多くは こんな感じだよ 」
「 そうなの?? あの ・・・ 一緒に行ってくれる? 」
「 もっちろ〜〜〜ん! あ そうだ そうだ
ちょっとネットで探してみるね スモウの動画 」
「 え 嬉しい〜〜〜 その間にランチの後片付け、やるわ。 」
「 の〜 の〜〜 ! 後片付けは 食洗機 に頼むさ。
ね 一緒に検索 しようよ〜〜 」
「 わ ♪ いいの?? 」
「 二人で検索すれば いろいろ気付くさ
フランはPCの方が得意だろ? ぼくは スマホで 」
「 了解〜〜 」
カチ カチ カチ ・・・ ススス キューー
二人で検索しまくった結果 ―
昭和時代のかなりふる〜〜いモノ から 平成の名勝負 やら
すでに引退した大横綱の 奉納土俵入り なんかも みつかった。
ジョーはスマホから PCに飛ばし ダウン・ロードしまくった。
「 では ― どんどん流してゆきます〜〜〜 」
モニターの前に 博士 と フランソワーズが陣取り
ジョーは 少し離れてキーボードを操作する。
「 これ すごい古いけど ・・・ うわあ〜〜〜 」
「 ・・・ おお〜〜 これは 昭和の大横綱 ではないかな 」
「 すご ・・・ 」
三人は 最初あれこれ言っていたが ― 次第に静かになってゆく。
皆 食い入るように画面を見つめている。
「 うそ・・・ 二番のドゥミ・プリエから こんなに脚 あがる???
このヒト ・・・ 肥満体なのにきっちりアンディオールができてる! 」
「 すご ・・い どのリキシもアンデイオール 完璧だわ!
ねえ このリキシ、きっとね最高のダンサーになれたかも〜〜 」
フランソワーズは 大きな目をまじまじと見開き 張り付いている。
「 え バレエと似てるの?? え〜〜〜 スモウがあ?
だってさ 究極の体格差 じゃね? 」
「 体重とかじゃなくて。 股関節と筋肉よ。
・・・ これは 同じね。 たぶん同じ訓練をしてきたのよ 」
「 え〜〜〜〜〜〜 ダンサーとリキシがあ?? 」
・・・ ウソ ・・・・
だって だって おすも〜さんが バーで
プリエ〜〜 とか するわけ???
え それとも フランたちのレッスンに
どすこいっ!! とか いって組合うわけ???
「 ほう〜〜 なるほどなあ ・・・
クラシック・バレエの基礎、股関節のアンディオール は
力士の 股割り と同じことなのだね 」
「 まあ 博士〜〜 すぐにお判りになったのですか 」
「 解剖学的な観点で見ると な。
卓越した肉体を使うパフォーマンスには 共通項があるものだ。」
「 へ え〜〜〜〜〜 」
「 ああ ・・・ だから あの横綱さんは ア・ラ・セゴンドでの
グラン・バットマンがたっか〜〜いのですね?
軸脚、びくともしてませんし 」
「 そういうことだな 」
「 すご〜〜いわあ〜〜〜 」
「 ?? わかんないんだけど〜〜〜〜 」
ジョーが 一人で ?? を飛ばしまくっている。
「 あ〜 ごめんなさいね あのね ほら・・・
さっき 大横綱の奉納土俵入り が あったでしょう? 」
「 うん! あれって 明治神宮だね〜〜 」
「 まあ そうなの? 林の中みたいに見えたけど ・・・
そこで よいしょっ!! って やってたでしょ? 」
「 うん。 だ〜〜〜〜ん って脚 あげて 」
「 そ。 あのワザは ほら これと同じよ 」
ひょい す −−−− ばっ !
フランソワーズは ソファから立ち上がると
姿勢を正し ― ひょい ・・・っと右脚を耳の横まで上げた。
そのまま ・・・ 脚は空中に静止していて 彼女は笑顔。
「 ・・・ ひえ〜〜〜〜〜 すご ・・・ 」
「 すごくないのよ レッスンを始めたチビのころからやってるから ・・・
多分ね〜〜 リキシのヒトたちも 同じよ 」
「 え ・・・ なんてことなく 上げてるってわけ?
だってさ〜〜 皆 100キロ以上 あるんだよ?? 」
「 体重はあまり関係ないのよ、筋肉が鍛えてあれば ね 」
「 へ〜〜〜〜〜〜 すげ〜な〜〜〜〜
!! あ そうだ〜〜 そうだ!!
ね これ !!
ねえ ぼくよくわかんないから 全部 持ってきたよ 」
ガサゴソ ・・・・
ジョーは ソファの横に置いていた パンフ・チラシの山を持ってきた。
「 え なあに ・・・?
○○ダンス・ワークショップ? バレエ・スタジオ 生徒募集?
・・・ え これ 全部ダンス関係のパンフレット? 」
「 ウン モトマチにあるダンス・ショップでみつけて・・・
フランが欲しい情報かどうかわかなくて とりあえず全部持ってきた
関係ないのも多いかも ・・・ でも なにかあると思うんだ 」
「 ・・・ ジョー〜〜 ありがとう!! 」
「 けっこう大きなダンス・ショップでさ〜〜〜
いろんなヒト、いたよ? 今度 一緒に行ってみようよ 」
「 ・・・ ありがとう〜〜 ジョー〜〜〜 」
「 あのさ。 こんなパンフ とか言ってくれたら
ぼく 探してくるから! 」
「 ・・・ ありがとう う 嬉しいわ ・・・ 」
「 フランソワーズや コズミ君のとこの学生さん達にも
女子学生が混じっているから 聞いてみよう 」
「 博士 ありがとうございます〜〜〜 」
「 最近は この国でもオープン・クラス というのが多いそうじゃよ。
ジョー 場所とか相談にのってやっておくれ 」
「 はい!!! フラン〜〜 どんどん聞いてね 」
「 ありがとう ・・・ !
わたし できれば ― どこかバレエ・カンパニーでレッスンしたいの 」
「 ばれえ・かんぱにー? 」
「 あ 二ホンでは バレエ団 とか バレエ・スタジオ とか言うみたい 」
「 そっか! じゃ それを探そうよ 」
「 ・・・ 嬉しい・・・わ あ でもね 自分でもできるから
ジョーには 地理的なこと、教えて欲しいの 」
「 おっけ〜〜 任せて! 」
「 ありがとう〜〜 ああ なんだか嬉しいことばっかり♪
楽し過ぎてちょっと怖いくらいよ 」
「 え〜〜 そんなコトないって〜〜 」
「 そうじゃよ フランソワーズ ずっとそういう笑顔がみたいよ 」
「 ・・・ はい ・・・
ああ でもこの幸せ気分 皆で分けたいわ 」
「 あ。 いいこと 思い付いたよ! 」
「 なあに? 」
「 あのさ 今度さ コズミ先生をお招きして
ちゃんこなべ やろうよ?
この集めた録画みて いろいろ・・・解説、お願いして さ 」
「 わあ それ いいわね〜〜〜
今度はウチでオイシイ ちゃんこなべ しましょう! 」
― 数日後。 ギルモア邸のリビングでは
( 一般的には ) 季節外れの 鍋・パーティ が催された。
「 あは な〜んか ちゃんこなべ っていうより
なんでもオイシイモノ鍋 になっちゃったかなあ〜〜 」
ジョーは 鍋奉行 を 買って出たが ちょいと情けない顔だ。
「 いやいや ジョー君〜〜 たいそう美味ですよ 」
コズミ博士は いつも温厚な笑顔だ。
「 うむ うむ これはウマイな〜〜〜
ワシは どうやら豆腐にハマってしまったらしいぞ 」
「 あら 博士もですか? わたしも〜〜〜〜♪
お豆腐って カロリーは低いし美味しいし 最高〜〜 」
えへ ・・・・
よかったぁ 〜〜〜〜
・・・ 皆 優しいなあ 〜
割烹着に三角巾姿のジョーは こっそり袖で目尻を拭っていた。
― そして スモウの録画ががんがん流れ
コズミ師匠の解説に 皆 耳を傾けた。
「 日本人はね よく 人生を相撲にたとえたりしていました。
まあ 我々くらいな年寄だけでしょうが ね 」
「 え ・・・? 人生を? 」
「 はいな。 人生は 足が徳俵に掛かってから といいますからなあ 」
「 ??? とくだわら??? 」
「 ああ これは相撲の世界の用語でね
徳俵 とは土俵の ちょっと飛び出た部分なのですが ・・・
背水の陣 から が〜〜〜〜〜〜っと盛り返す というたとえですな。
絶対絶命 でも 徳俵に掛かった脚を軸に反転攻勢にでる とね 」
「 絶体絶命 ・・・?
・・・ あ なんか わかる気がします 」
もうダメだって感じたら ― 床をしっかり踏む!
これはチビの頃から レッスンで言われていた言葉だ。
バランスが崩れそうな時 グラン・フェッテが落ちそうな時
ぐ・・・っと一足 床を踏む。 不思議と体勢を挽回できる。
冷静になるってことかもしれない。
「 ほう? 似たような経験がありますかな 」
「 はい 格闘技 じゃないですけど ― わたし達も
自分自身と闘って ― 踊ってますから 」
「 なあるほど ・・・ さすがですなあ 」
「 いえいえ 」
「 足の裏にですね 徳俵を感じたとき とは 実は絶体絶命なのですが
ぐ・・・っと堪えて そこを足掛かりにするのですよ
そして 反転・攻勢に ダッシュ! ですな 」
「 ― はい。 わかります
あ わたし リキシじゃないし とくだわら も見たこと、ないですけど 」
「 いやいや なにごとも死に物狂いになれば 真実は共通 かも
しれませんなあ 」
「 真実は 共通 ・・・
あのう コズミ先生も ・・・? お仕事とかで 」
「 はいな 我々はアタマの中で 闘っています。
時に 絶対絶命 というか 完全に行き詰まった時 ― そこから
踏ん張って やり直しますよ 」
「 ・・・ あ〜〜 なるほど ・・・ 」
そう よ ・・・ !
いま わたし。
徳俵を足掛かりに ダッシュ! だわ。
ええ また 踊るの。 踊るのよ!
「 ― 徳俵 かあ ・・・ ふうん ・・・ 」
ジョーは びどく感心した気分で 録画の土俵をしげしげと見つめる。
「 あ ・・・ あそこが 徳俵 かあ 〜〜
あそこに追い詰められてから ― 反撃! するのかあ ・・・ 」
彼は 思わず自分の足元を見た。
床の上に スリッパをはいた足がある だけ。
― けど。
そうさ ぼくだって徳俵のトコまで
追い詰められたじゃん
・・・ そんでもって ・・・
ぼくは ― なにに向かって ダッシュ するのかな ―
あ。 うん。 フランの笑顔 だね!
そう 皆 目指すその一点 があるんだよ ジョー君♪
******* おまけ *******
数日後 晩ご飯の後 まったりしていると。
ジョー が ボード・ゲーム みたいなモノを持ち出してきた。
「 ね! 勝負しよ! 」
「 え なあに? ゲーム ? 」
「 ウン ぼくが作ったんだけどさ〜〜 」
「 え 〜〜 ? あ かわいい〜〜〜〜 きゃあ
ねえ ねえ どうやるの? 」
「 あのさ こうやって ・・・ 」
トントントン トコトコトン −−−−
ジョーは その昔 神父様が作ってくれたのを思い出し
紙スモウ を作ったのだ。
「 きゃ〜〜 ちゃんと取り組み だわああ〜〜〜
ちっちゃなリキシ〜〜〜 」
「 ね 楽しいだろ? 」
「 すご〜〜 い〜〜〜 あ 土俵、描くわね〜〜 いい? 」
「 うん 頼む 〜 ぼく、もっとリキシ、作ろうっと 」
フランソワーズが お菓子の箱の裏に描いた土俵には
ちゃ〜んと 徳俵 が存在していた。
人生は 徳俵に足が掛かった時からが 勝負!
*****************************
Fin.
************************
Last updated : 06.13.2023.
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************** ひと言 **************
徳俵云々〜 は チビの頃、相撲ファンだった祖母が教えてくれた言葉。
今 しみじみ〜〜〜 噛み締めています。 ああ あの時も この時も
わたくしは 徳俵を足の裏に感じていましたっけ ・・・ (-_-)